2010年総括

半分以上が無駄な1年であった。
今年は住宅を購入してから初めて、繰上げ返済をしなかった。貯金が減っていくことが不安事項だ。
7月以降は1日の半分はスポーツジムで過ごすようになった。半年以上、就職活動に消費した。相変わらず無職だ、ということを除けばほぼすべてが順調なのが救いだ。
暇な時間のおかげで、登山の楽しみに目覚めたことは特筆すべきことであろう。登ってみるまでまさかこんなに楽しいとは思わなかった。そして水泳大会に参加したことも自信がついた。某作家の読書会に参加し始めてから知的好奇心が刺激され、読書熱が出たことも嬉しいことだ。前の職場で香港に連れて行ってもらったこともよい思い出だ。そして、ローティという新しい家族が出来たことが、何よりもよかった。

百蔵山〜扇山 縦走

冬の登山は足場重要とのことで、日当たりの良さそうな山をセレクトした。山梨県の百蔵山と扇山だ。体力のある初心者にもってこいの山だ。8時30分に猿橋駅に到着し、16時40分四方津駅発の電車で帰還。

駅から登山口までのアスファルトの道が、結構きつかった。時間があればバスでいくことをおすすめする。登山道から百蔵山頂上までの登りは、比較的効率のよい登りで、途中富士山も見えるので苦にならない。

百蔵山頂上にて。ベンチがなく丸太がたくさんおいてあった。ひらけている。

百蔵山から扇山までの下り、登りがもっともボリュームがあった。急なのだ。しかし、冬登山のいいところは、落ち葉がクッション替わりになって足の負担が軽減されるところだ。足元もたまに氷柱があるくらいで、滑らなかった。

発泡スチロールのような霜柱が。一体どういう原理でこんな形になるのだろう?土から生えているようだった。

扇山の頂上は百蔵山よりも若干眺めが良かった。富士山と新宿都心が同時に見える。こちらもひらけているのでお弁当タイム。それにしてもベンチがない!

扇山からの下りはすぐ地上に着くが、駅まで歩く距離が長い。歩けない距離ではないが。
山梨の山は明るく、日差しが強い。そして富士山が大きい。奥多摩と違い、鬱蒼としていないせいか、死の危険を感じない。冬は山梨に行こうと決意。

コンスタンチン・リフシッツ

ourchild2010-12-23

これほどのスタンディングオベーションを武蔵野で目撃したことがあるだろうか。
平均律クラヴィーアの全曲演奏という、演奏者のみならず客にも高度な集中力を要求する演奏会に行った。第1巻と第2巻の第1番から交互に演奏。演奏者はコンスタンチン・リフシッツ。1976年ウクライナ生まれのピアニスト。写真のとおり、ずっと左上を見て演奏していたのが印象的だった。
演奏終了後の夜10時、皆総立ちで拍手が鳴り止まず、用意していなかったアンコールの曲がまさかの第1巻第1番。これからまた全曲演奏が始まるのかと、笑ってしまった。まあ、ここでバッハの他の曲を演奏というのもしっくりこないし、ショパンを演奏するわけにもいかず、最初の曲を弾く。本当に準備していなかったのだろう。何か弾かなければあの拍手は収まらなかった。


第二部の前半が非常に良かった。(正確には覚えていないがBWV860あたりか?)曲が終わった瞬間に拍手して立ち上がり、叫びたくなるくらいのエキサイティングな演奏だった。(拍手は一曲ごとではなく全て終了してからすることになっている)そんなふうに感じていたのは私だけではあるまい。会場全体が胸の高鳴りを共有していた。正直言うと上手い言葉が思いつかないが、「あーっ!!こいつはスゲーや!!」という感じか。演奏者も唸っていたが、ピアニストというものは興奮すると唸るのだろうか。「グレン・グールドの再来か!」「現代最高のバッハ弾き」とのキャッチフレーズでチケットを購入したのだが、まさか演奏中に唸るからという理由でグールドを引き合いに出したのか・・・?まあそれはおいておいて「グールドの再来」というコピーも(若干の誇張はあるものの)あながち間違いでもないな、と思わせるような演奏会だった。
今回の演奏ではBWV860〜887まで、第2部前半で演奏した曲が全て好きになった。演奏者によっていいと思える曲が異なるところが平均律の面白いところだ。
以前はグルダの演奏を聴いてBWV887が好きになった。http://d.hatena.ne.jp/ourchild/20090612

合計4時間以上に亘る全曲演奏会、こういう企画をぜひまた武蔵野で開催してほしい。そしてレコード会社の方、なぜリフシッツの平均律クラヴィーアをCDにしないのか。買うのでぜひCD化して貰いたい。<<第2部>> 前半
第1巻 第13番 BWV852
第2巻 第13番 BWV882

第1巻 第14番 BWV859
第2巻 第14番 BWV883

第1巻 第15番 BWV860
第2巻 第15番 BWV884

第1巻 第16番 BWV861
第2巻 第16番 BWV885

第1巻 第17番 BWV862
第2巻 第17番 BWV886

第1巻 第18番 BWV863
第2巻 第18番 BWV887


高尾山〜陣馬山 縦走

高尾山〜陣馬山 縦走
全行程距離 約19.5km
所要時間 約8時間
高尾山口(稲荷山コースを経由)〜高尾山〜景信山 約7.5km
・景信山〜陣馬山〜陣馬高原口バス停 約12km
7時登山開始、16時30分バス停着

3つ年下のメンズふたりと、近場で登山。今日は私がパーティのリーダーなので、万が一に備えて人数分の非常食やヘッドライトやサバイバルシートを持参(遭難する気満々)。他愛もない話を延々をしながらダラダラ登山するのにちょうどいいルートだ。道が歩きやすく、すれ違う人も多いので緊張感はさほどない。

高尾山を過ぎたあたりで若干人が減る。富士山を眺めながらの道は最高だ。城山に行く途中のウッドデッキで、煙草休憩(私以外のふたりは喫煙者)。この時に、持参した「カラムーチョ」を開けて皆で食べる。山で塩分補給は欠かせない。私が持参したカラムーチョは内容量が多かったにも関わらず、皆で完食。そして持参した水も90%消費してしまった。高尾〜陣馬コースは山ごとに茶屋とトイレがあるらしいので、水はなんとかなるだろうと、多めに持ってこなかったのだ。この判断がまずかった。行けども行けども茶屋はあるけど全て閉まっていたのだ!!パーティのリーダーたる者、重くても水は余計に持って来るべきだった、とカラムーチョで乾ききった喉を潤せないまま、歩き続ける。そして、陣馬山へ。なんと!一件だけ茶屋が営業していた。清水茶屋の主は命の恩人だ。水を買い込み、お湯を沸かしカップラーメン(昼食)にありつける。

↓は陣馬山山頂で。


最も風が強く気温が低い山頂でランチ。カップラーメンがこれほど美味しく感じるとは!
水は重くても余計に持って行こうと固く決意。

ourchild2010-12-03

不合理だからすべてがうまくいく/ダン・アリエリー
を読む。これは非常に面白かった。数時間で読んでしまった。
題名だけ目にすると「小さいことにくよくよするな」的な自己啓発系の本かと思うが、全く違う。小手先だけのビジネス・生き方テクニック論でもなく、気合系、宗教・スピリチャル系、PHP文庫系でもない。
著者ダン・アリエリーは行動経済学の第一人者で、実験による検証を重ねた上での主張なので、説得力がある。
そして、印象的なのが著者自身のエピソードだ。
18歳の時に全身の70%にやけどを負う事故にあい、3年間を病院で過ごしたという。しかも入院中に輸血を受けた血液が感染血液で、C型肝炎になってしまった、という踏んだり蹴ったりな経験をしている。この経験こそが行動経済学を研究するきっかけになったというのだから、何が役立つかわからない。
「不合理さ」という人間の本質を分析することによって、短期的な感情に左右されずによりよく生きられるのではないだろうか。人間は合理的な生き物だ、という誤解から作られた従来の商品、報酬体系、社会システムを、非合理的な生き物だ、と自覚して実験をした上で再設計した方が、実益があるのではないか。

特に興味深い章とその要約を記す。

第六章 順応について〜なぜ私たちはものごとに慣れるのか
この章が最も興味深かった。この言葉が最も心に響いた。

わたしたちは未来を想像するのは得意でも、その未来に自分がどのように順応するかは、予想できないのだ。

半身不随の人、宝くじの当選者、そして障害を持たないが特別幸運でもないふつうの人たち、生活満足度にどれくらい違いがあるだろうか?出来事の直後ならば大きな違いが見られただろうが、データが集められたのは出来事の一年後で、彼らの間で満足度にさほど大きな違いは見られなかったのだ。人生を変えるほどの大きな出来事は、満足度に影響を及ぼすが、この影響は時間と共に大幅に薄れるというのだ。人間は多くの状況に大いに順応する。このことは、今、不幸の渦中にある者にとって、大きな慰めとなる。では、幸福はどのように持続させれば良いのか?順応を遅くすることによって満足度も持続することがわかった。厄介なことは一気に片付け、楽しいことは休み休みやればよいのだ。

第一章 高い報酬は逆効果〜なぜ巨額のボーナスに効果があるとは限らないのか
高いインセンティブをを提示されれば目標達成のために一層努力し、この増やした労力のおかげで最終的に目標に近づいていくはずだ、と考えて巨額のボーナスを提示する。しかし、本当にそうなのだろうか?ラットを使った実験によって証明するのみならず、人間を対象として実験をする。(この実験が面白いのだ)
結論としては、過剰なストレス(報酬)により必死になるほど力が発揮できなくなることが示された。仕事よりも報酬を気にしすぎてしまい、高い報酬はかえって逆効果になりうるので、もっと効果的な報酬の与え方を提案している。

第二章 働くことの意味〜レゴが仕事の喜びについて教えてくれること
どんなにささやかでもその仕事に意味が有るか無いかで、モチベーションに大きな違いが生じる。レゴ遊びの実験により証明する。実に上司や経営者に読んでほしい章だ。
食いぶちを自分で稼ぎたがるのは人間だけではない。驚きなのが、魚、鳥、ネズミ、サル、チンパンジーなど多くの動物が、短いルートでエサを得るよりも、長い迂回ルートを通って餌を手に入れるのを好むのだという(唯一の例外がネコ)。この結果は経済合理性とは反する結果だ。分業による効率化のため、今まで仕事のやりがいということを過小評価しすぎてきたが、見直すことによってもっと豊かな仕事人生を送ることができるのではないか。

第十章 短期的な感情が及ぼす長期的な影響
意思決定する際は、直前に感じた全く無関係な感情でさえ、影響を及ぼす。一時的な感情に流された行う決定もまた、下されてからかなり時間がたっても、似たような選択や、他の領域での決定に、なお影響を及ぼし得る。つまり、一時の感情に身を任せて決定してはいけないということだ。感情的な時は決断を控えたほうが懸命だ。

今月(2011年1月)号クーリエの巻末に要旨が抜粋してあるので、気になる方はまずそちらを読んでみるといい。絶対に続きが読みたくなるから。(因みに私は自宅でクーリエを読んでいてダン・アリエリーの記事を目にして、あまりの興味深さに着替えて書店まで走った)

※写真は超合理的人間スポック、息子の方だ。我々人間は彼のようには決断できないのだ。

実は、クーリエの記事よりも前に、TEDチャンネルをきっかけにダン・アリエリーを知っていた。下記リンクは日本語字幕もあるし、短いのでオススメだ。他にもドーキンスやカーキキングなど著名人の講座が字幕付きで見られる。
http://www.ted.com/talks/lang/jpn/dan_ariely_on_our_buggy_moral_code.html

御前山

奥多摩湖のすぐそばにある山、御前山に登る。先月号の散歩の達人にも載っていたが、初心者におすすめの山とのこと。

紅葉がきれいな奥多摩湖からの眺め。ここまではバスで来る。

紅葉を期待したが、どうやらすべて朽ち果てたらしい。落ち葉ばっかりだ。奥多摩湖の眺めも期待したが、曇って見えない。

だだっ広い広場のような道が途中で。不気味だ。

霧が出てきたせいか、前が見えない。霧のせいで苔が生えて不気味な雰囲気となるのか。

頂上へ着いた瞬間に、今日はじめて見た青空。そして雲の上の富士山。この切り替わりは感動的だ。

反対側の奥多摩の山々もよく見える。帰り道は奥多摩駅まで徒歩。歩きやすく、変化に富んだ登山道だった。